物もの事ごとを科か学がく的てきに考かんがえる人ひとは「進しん化か」を選えらび，信しん心じん深ぶかい人ひとは「創そう造ぞう」を選えらぶはずだ，と思おもわれるかもしれません。

 ところが，必かならずしもそうではないのです。

 実じっ際さい，科か学がく者しゃを含ふくめ，教きょう養ようのある人ひとたちの中なかにも，進しん化か論ろんを疑ぎ問もん視しする人ひとは少すくなくありません。

 例たとえば，昆こん虫ちゅう学がくのジェラルド･ヘルテル教きょう授じゅは，大だい学がく生せいのころ進しん化か論ろんを教おしえられました。こう言いっています。「試し験けんの解かい答とう用よう紙しには，教きょう授じゅたちの望のぞむ答こたえを書かきました。でも，教おしえられたことは信しんじていませんでした」。

 科か学がく的てき思し考こうの人ひと々びとの中なかにさえ，生せい命めいの起き源げんは進しん化かにあるという説せつを受うけ入いれ難がたく感かんじている人ひとがいるのはなぜでしょうか。その理り由ゆうを知しるために，多おおくの研けん究きゅう者しゃたちが答こたえを見みいだせずにいる，次つぎの2つの問といについて考かんがえましょう。（1）生せい命めいはどのように誕たん生じょうしたか，（2）生せい物ぶつの種しゅ類るいはどのように殖ふえたか，という問といです。

 このように言いう人ひともいる。生せい命めいは無む生せいの物ぶっ質しつから自し然ぜんに発はっ生せいした。

 その答こたえに納なっ得とくしない人ひともいるのはなぜか。科か学がく者しゃたちは，生せい物ぶつの化か学がく構こう造ぞうや分ぶん子し構こう造ぞうについて以い前ぜんよりも多おおくのことを知しっていますが，生せい命めいとは何なにかについては今いまもなお確たしかな定てい義ぎを述のべることができません。最もっとも単たん純じゅんな生せい細さい胞ぼうでさえ，無む生せいの物ぶっ質しつとは大おおきく異ことなっているのです。

 科か学がく者しゃたちは，数すう十じゅう億おく年ねん前まえの地ち球きゅうがどんな状じょう態たいであったか，推すい測そくすることしかできません。生せい命めいがどこで誕たん生じょうしたかについての見けん解かいはまちまちです。火か山ざんの火か口こうで誕たん生じょうしたと言いう人ひともいれば，海かい底ていで誕たん生じょうしたと言いう人ひともいます。さらには，生せい命めいの構こう成せい要よう素そが宇う宙ちゅうのどこかほかの所ところでまず形けい成せいされ，それが流りゅう星せい体たいの中なかに埋うめ込こまれた状じょう態たいで地ち球きゅうに到とう達たつした，と考かんがえる人ひとさえいます。しかし，その説せつでは，生せい命めいの誕たん生じょうについての疑ぎ問もんの答こたえにはなりません。問もん題だいを宇う宙ちゅうのかなたへと押おしやっているにすぎないからです。

 今こん日にち知しられている遺い伝でん物ぶっ質しつは種しゅ々じゅの分ぶん子しから成なっていますが，科か学がく者しゃたちは，遺い伝でん物ぶっ質しつになる前まえの段だん階かいの分ぶん子しが存そん在ざいしていた，と推すい測そくしています。それらの分ぶん子しは不ふ活かっ性せい物ぶっ質しつから自し然ぜんにできて自じ己こ増ぞう殖しょくするようになった，と考かんがえられています。ところが科か学がくでは，そのような分ぶん子しがかつて存そん在ざいしたという証しょう拠こは何なにも得えられておらず，その種しゅの分ぶん子しを科か学がく者しゃが実じっ験けん室しつで作つくり出だすこともできていません。

 生せい物ぶつの特とく異い性せいは，情じょう報ほうを蓄たくわえて処しょ理りできることにあります。細さい胞ぼうは，遺い伝でん暗あん号ごうの指し令れいを伝でん達たつし，読よみ取とり，実じっ行こうします。科か学がく者しゃたちの中なかには，細さい胞ぼうの化か学がく構こう造ぞうをコンピューターのハードウェアに，また遺い伝でん暗あん号ごうをソフトウェアに例たとえる人ひともいます。しかし進しん化か論ろんでは，その情じょう報ほうがどこから来きたのか，説せつ明めいできません。

 1個この細さい胞ぼうが機き能のうするためには，幾いくつものタンパク質しつ分ぶん子しが必ひつ要ようです。典てん型けい的てきな1つのタンパク質しつ分ぶん子しは，幾いく百ひゃくものアミノ酸さんが特とく定ていの順じゅん序じょで鎖くさり状じょうにつながった構こう造ぞうになっています。さらに，それが有ゆう用ようであるためには，特とく定ていの三さん次じ構こう造ぞうに折おりたたまれていなければなりません。タンパク質しつ分ぶん子し1つでさえ，自し然ぜんに形けい成せいされる確かく率りつはゼロに近ちかい，という結けつ論ろんに至いたっている科か学がく者しゃたちもいます。物ぶつ理り学がく者しゃのポール･デーヴィスは，「細さい胞ぼうが機き能のうするためには，何なん千ぜん種しゅものタンパク質しつを必ひつ要ようとする。それらが偶ぐう然ぜんだけの作さ用ようで形けい成せいされたとは，とても考かんがえられない」と書かいています。

 結けつ論ろん。これまで幾いく十じゅう年ねんにもわたって科か学がくのほぼすべての分ぶん野やで様さま々ざまな研けん究きゅうが行おこなわれてきましたが，生せい命めいは既き存ぞんの生せい命めいからしか生しょうじないという事じ実じつは変かわっていません。

 このように言いう人ひともいる。最さい初しょに存そん在ざいするようになった生せい命めい体たいが増ぞう殖しょくし，様さま々ざまな突とつ然ぜん変へん異いと自し然ぜん選せん択たくを繰くり返かえすうちに，人にん間げんを含ふくむ多た種しゅ多た様ような生せい物ぶつになった。

 その答こたえに納なっ得とくしない人ひともいるのはなぜか。細さい胞ぼうの複ふく雑ざつさは一いち様ようではありません。ある文ぶん献けんによれば，単たん純じゅんな細さい胞ぼうが複ふく雑ざつな細さい胞ぼうへとどのように発はっ達たつし得えたのかは，「多おおくの場ば合あい，進しん化かに関かんするなぞのうち，生せい命めいの起き源げんという最さい大だいのなぞに次つぐなぞとされて」います。

 科か学がく者しゃたちは，各かく細さい胞ぼうの内ない部ぶに，協きょう働どうして複ふく雑ざつな仕し事ごとを行おこななう，タンパク質しつから成なる精せい密みつな分ぶん子し機き械かいを幾いくつも発はっ見けんしてきました。それらの仕し事ごとには，栄えい養よう素そを運はこんでエネルギーに変へん換かんしたり，細さい胞ぼうの破は損そん箇か所しょを修しゅう復ふくしたり，細さい胞ぼうの隅すみ々ずみにメッセージを伝つたえたりすることが含ふくまれています。突とつ然ぜん変へん異いや自し然ぜん選せん択たくでそのような精せい巧こうな構こう成せい要よう素そが組くみ合あわされて機き能のうするようになることがあり得えるでしょうか。それは無む理りだ，と思おもう人ひとは少すくなくありません。

 動どう物ぶつや人にん間げんは，1個この受じゅ精せい卵らんから成せい長ちょうします。胎たい芽がの内ない部ぶで細さい胞ぼうが増ぞう殖しょくし，特とく殊しゅ化かして，様さま々ざまに異ことなる形かたちや機き能のうを持もつ，体からだの各かく部ぶを形けい成せいしてゆきます。各かく細さい胞ぼうが生せい体たい内ないで何なにになってどこへ動うごくべきかをどうして“知しっている”のか，進しん化か論ろんでは説せつ明めいがつきません。

 科か学がく者しゃたちも今いまでは，動どう物ぶつの1つの種しゅが別べつの種しゅへと進しん化かするには，細さい胞ぼう内ないの分ぶん子しレベルで数かず々かずの変へん化かが起おきなければならない，ということを悟さとっています。「最もっとも単たん純じゅんな」細さい胞ぼうでさえ進しん化かによってどのように生しょうじ得うるかを科か学がく的てきに証しょう明めいできないのであれば，地ち球きゅう上じょうの様さま々ざまな種しゅ類るいの動どう物ぶつが突とつ然ぜん変へん異いや自し然ぜん選せん択たくによって存そん在ざいするようになったというのは納なっ得とくのゆくことでしょうか。生せい化か学がくのマイケル･ビヒー教きょう授じゅは，動どう物ぶつの造つくりに関かんして，研けん究きゅうにより「予よ期きしなかった驚おどろくべき複ふく雑ざつさが明あきらかになっている」一いっ方ぽうで，「そのような複ふく雑ざつさが知ち性せいの伴ともなわない過か程ていによりどのように進しん化かし得えたのかについては，少すこしも解かい明めいされていない」と述のべています。

 人にん間げんには，自じ覚かくや自じ己こ認にん識しき，考かんがえたり推すい論ろんしたりする能のう力りょく，寛かん大だいさや自じ己こ犠ぎ牲せいや正せい邪じゃの感かん覚かくといった倫りん理り的てき特とく質しつがあります。人にん間げんにそれら比ひ類るいのない特とく質しつが備そなわっていることは，突とつ然ぜん変へん異いや自し然ぜん選せん択たくでは説せつ明めいできません。

 結けつ論ろん。多おおくの人ひとが，生せい命めいの起き源げんは進しん化かにあるというのは疑うたがう余よ地ちのない事じ実じつである，と主しゅ張ちょうする一いっ方ぽうで，進しん化か論ろんでは，生せい命めいがどのように誕たん生じょうし，生せい物ぶつの種しゅ類るいがどのように殖ふえたかについて，納なっ得とくのゆく答こたえが得えられないと考かんがえている人ひとたちもいます。

 証しょう拠こを検けん討とうした結けっ果か，生せい命めいは優すぐれた知ち性せいによって生うみ出だされた，という結けつ論ろんに至いたった人ひとは少すくなくありません。例たとえば，かつては無む神しん論ろんの有ゆう力りょくな支し持じ者しゃであった，哲てつ学がくのアントニー･フルー教きょう授じゅもその一人ひとりです。生せい命めいと宇う宙ちゅうの物ぶつ理り法ほう則そくの驚きょう異い的てきな複ふく雑ざつさについて知しった時とき，見けん解かいを変かえました。古こ代だいの推すい論ろんの仕し方かたを引いん用ようして，「我われ々われは，証しょう拠こを検けん討とうしたなら，どんな結けつ論ろんに至いたろうと，それに従したがわなければならない」と書かいています。フルー教きょう授じゅにとって，検けん討とうした証しょう拠こは，創そう造ぞう者しゃの存そん在ざいを指さし示しめしていたのです。

 この特とく集しゅう記き事じの初はじめのほうで紹しょう介かいしたジェラルドも，同おなじ結けつ論ろんに至いたりました。高こう等とう教きょう育いくを受うけ，昆こん虫ちゅう学がくを教おしえていましたが，こう述のべています。「生せい命めいが無む生せいの物ぶっ質しつから自し然ぜんに生しょうじることを示しめす証しょう拠こはありません。わたしは，生せい物ぶつに秩ちつ序じょと複ふく雑ざつさが見みられることから，その組そ織しき者しゃまた設せっ計けい者しゃが存そん在ざいするはずだ，と確かく信しんしました」。

 芸げい術じゅつ作さく品ひんを調しらべればその作さく者しゃについて知しることができるのと同おなじように，ジェラルドは，自し然ぜん界かいを研けん究きゅうすることによって創そう造ぞう者しゃの特とく質しつを認にん識しきするようになりました。また，時じ間かんを取とって，創そう造ぞう者しゃの著ちょ作さくとされる聖せい書しょも調しらべました。（テモテ第だい二に 3:16）そのようにして，人じん類るいの起き源げんや歴れき史しに関かんする疑ぎ問もんの納なっ得とくのゆく答こたえや，今こん日にちの人ひと々びとの直ちょく面めんしている諸しょ問もん題だいの実じっ際さい的てきな解かい決けつ策さくを知しりました。それで，聖せい書しょもやはり最さい高こうの英えい知ちの所しょ産さんなのだ，と確かく信しんしました。

 ジェラルドが知しったように，聖せい書しょの答こたえは，じっくり考かんがえてみる価か値ちがあります。ぜひご自じ身しんで調しらべてみてください。